手塚治虫『火の鳥』太陽編 その3(ラスト) 感想 権力って怖い。。
こんにちは、べっちです。
黎明編から始まり半月かけて『火の鳥』を読みながら感想をお話し続けてきましたが、今日はいよいよラストになります。
『火の鳥』の感想記事の一覧は下記にありますので、よろしければご覧いただけるとうれしいです。
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「火の鳥」感想記事一覧
せっかく革命が成功したのに・・・
僕は今までマンガを読んでこんなに腹が立ったのは初めてです。
「シャドー」側の多くの人達が、それこそ命懸けで「光」に革命を仕掛け、多くの犠牲の上にようやく成功したのに、新しい支配者が前と同じく巨悪だったのです!
「光」の時代では、「火の鳥」の力で人間が永遠の命を得られるという教えを信じるかどうかの宗教で、信じない者は徹底的に弾圧する、というものでした。
そして、新しい「シャドー」の時代になり、ようやく平等で理想的な世の中が出来上がると思ったら違ったのです。
新しい支配者は鼻の大きな「猿田」的な人物だったのですが、革命に勝利して間もなく新しい宗教を作ることを宣言し、
それは人間が永遠に生きることこそ
究極の幸せという教えだ人間がみずからの英知で
永遠の生命をつくり出す信じない者は
片っ端から処罰する
と言い出したのです。
内容的に「光」時代の宗教と何一つ変わっていません。
これでは何のために「スグル」が
「シャドー ばんざい!!」
と叫びながら自爆していったのか。
「スグル」の自爆により「光」の総本殿は崩れますが、こんなことなら失敗しても成功しても同じことではないでしょうか。
・・・まさに犬死です。。
21世紀の「猿田」はなおも、こう続けます。
政権に従わせるには
信仰を利用することだよ光一族がそうだったし
歴史上いくらでも例があるぞ
彼は始めから自らが独裁権力を得ることしか考えていなかったのですね。
「歴史に例がある」と言いますけど、ここまでヒドイのは歴史上にも稀だと思います。
マンガのキャラクターに腹を立てても仕方がないかもしれませんすが、彼のことは絶対許せません。
飛鳥・奈良時代の「大海人皇子」も、クーデターに成功し「日の本」信仰を利用して独裁への道を進むことになりますが、彼の場合は元々は純粋な信仰の気持ちもありました。
大海人皇子の場合、「権力」を得たことによって猜疑心が生まれた結果であり、最初から排他的な独裁を目指していたわけではないのです。
それでも、「日の本」信仰に異を唱えるものは弾圧するという「大海人皇子」の政策は、結果としては21世紀の「猿田」と同じ穴のムジナかもしれません。
権力って本当に恐ろしいものです。
火の鳥を読み進めてきて、
- 自分なりの「生きがい」を見つけることが幸せであること
- 「生きがい」とは、自分の信じる道を突き進むこと
- その道は人を不幸にすることであってはならない
ということを学んできました。
しかし、こんな風に理想をかかげて健気に生きたとしても、それを利用する悪い人が権力を持つことを考えるとなんともやるせなく、悲しい気持ちになります。
ラストはすがすがしい終わり方
「太陽編」では人間の醜さがクローズアップされましたが、それに対し「火の鳥」は、いつになく優しかったです。
今回は理不尽な罰を与えることは無く、人間同士の争いも終始見守り続けているだけでした。
そして、1000年の時を経て「犬上」と「マリモ」は結ばれることになります。
死後の霊の状態ではありましたが。
やはり、「スグル」と「ヨドミ」は、「犬上」と「マリモ」の生まれ変わりだったのですね。
火の鳥に導かれ、新しい世界へと旅立ったところで物語は終わりました。
死んでしまったのでハッピーエンドとまでは行かなくても、死後の世界で幸せそうな二人の描写は、なんともすがすがしくて「太陽編」のラストとしては良い終わり方だったと思います。
ただ、「火の鳥」全体の締めくくりとしては、なんとも中途半端だなぁという感想は拭えません。
話は「未来編」へと続いていくので、こんな終わり方もアリなのかもしれませんが、やはり少し寂しいです。
手塚先生は、もしかしたら「太陽編」で終わりでなく、20世紀の「現代」を舞台にもう一つくらい描こうとしてたようにも思えるのですが、考えすぎでしょうか?
- 1999年の「ノストラダムスの大予言」は「火の鳥」のおかげで回避された
- アメリカは「火の鳥」の忠告を無視して日本に原爆を落とした
- 現代の「猿田」である手塚先生と「火の鳥」が会話をする
など、続編があったらどんなかなぁと想像が膨らみます。
手塚先生がもっともっと長生きされたら続編が見れたかもしれないですね。
終わりに
さて、「火の鳥」のお話は今日でおしまいです。
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。
今後も機会があったら、火の鳥の特集記事なども書こうかな考えています。
その時はぜひ、僕のブログに遊びに来てくださいね。
火の鳥以外の記事も、よろしければ読んでいっていただけるとうれしいです!
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