手塚治虫『火の鳥』宇宙編 感想 メタモルフォーゼにトラウマ。。

2018年9月1日

こんにちは、べっちです。

今日は、手塚治虫『火の鳥』宇宙編のお話をします。

メタモルフォーゼにトラウマ

火の鳥「宇宙編」は全体的に暗くて怖い話でしたが、特に怖かったのは流刑星に出て来た「メタモルフォーゼ」という生き物です。
 
メタモルフォーゼ

・・・見た目もかなり怖いです。。

まるで足がたくさん生えているかのような・・・
 

動物でありながら動くことはできず、もとは宇宙で罪を犯した人が姿を変えたもの、という設定が実に恐ろしいです。

しかもその姿のまま永久に生き続けなくてはいけないというのも怖いです。
 

前回のヤマト編では「生き埋め」の話が出てきましたが、「メタモルフォーゼ」も同じようなものですね。

ヤマト編では最終的に死ぬことになったことに対し、今回は死ぬこともできないので、その意味では「生き埋め」よりはるかに残酷な話です。
 

暗闇の中を永遠に耐え続けているのってどんな気持ちでしょうか・・・?
 

それとも、「メタモルフォーゼ」になったら人間の心は失うことになるのでしょうか?

それならまだ救われると思いますが。。
 

でも、人間の心を失ってしまったとして、「マキムラ」を永遠に見守りたい一心で罪も無いのに「メタモルフォーゼ」となった「ナナ」の気持ちはどうなってしまうのでしょうか・・・?

何もかも認識できない状態の植物人間になるのと同じであれば、「マキムラ」のことも認識できません。

それだと何のために「メタモルフォーゼ」になったのやら。。
 

まぁそれでも、人としての心が残ったまま永遠に大地に縛り付けられるよりはずっとマシでしょうけど。

ある意味一度死んでから例えば「木」に生まれ変わるのと、似たようなものかもしれません。
 

でもなぁ、、

敢えて「メタモルフォーゼ」は「動物」という設定にしているということは、やっぱり「ナナ」の意識は残ったまま、という解釈の方が、やはりしっくりきてしまいます。。
 

赤ちゃんから再度育つ「マキムラ」にとっては、以前愛し合った「ナナ」のことなんて忘れてしまっていると思います。

きっと「ナナ」を見ても、他と同様その辺に生えている「メタモルフォーゼ」にしか見えないんだろうなぁ。。
 

考えれば考えるほど、「ナナ」のことは可愛そうになってしまい仕方がありません。。

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赤ちゃんと大人の間を無限に繰り返す酷な罰

「宇宙編」にはもう一つ、不老不死の酷な例が出てきます。

「マキムラ」という地球人が「フレミル」という星の人を大量に殺した罪で、大人と赤ちゃんの間を無限に繰り返すというものです。
 

考えようによっては、赤ちゃんから大人に成長していく時期は、普通の人と同様の感覚かもしれません。

でも、ある時成長が止まり、そして段々と若返っていくことに気付くことになります。
 

「マキムラ」も回想シーンの中で苦しんでいましたが、いずれ赤ちゃんになって死んでしまうイメージが常に付きまとってしまい、さぞ怖いことと思います。

何年何か月後には死ぬことが、逆算したらハッキリと分かってしまうのも、ツライことと思います。
 

そう考えると、人生っていつ死ぬか分からないことが、死の恐怖を和らげる効果につながっている気もしました。
 

しかし「マキムラ」赤ちゃんになっても死ぬことはありません。

今度は成長をし始め、大人になり、そしてまたある時点で赤ちゃんに戻っていくことになります。

これを1度や2度ではなく、永遠に繰り返す、、

火の鳥は罪に対する「当然の報い」のような言い方をしますが、あまりに残酷な仕打ちだと思いました。。
 

ある程度成長すると若返る不老不死の「ベニクラゲ」

そういえば、「マキムラ」のように、成長したり若くなったりを繰り返す生き物のことを思い出しました。

「ベニクラゲ」というクラゲです。

ベニクラゲ
出典)「不老不死」の生命体が存在した! 「ベニクラゲ」の秘密|進路のミカタニュース

とっても美しく、神秘的ですね。

中が透けて赤くなっている部分は、消化器官とのことです。
 

「ベニクラゲ」は、他のクラゲと同様に繁殖もしますし、ある時点まで成熟すると衰弱していくのも他のクラゲと同様です。

しかし、その後は死なず、一度団子のような状態に戻り、そしてまた同じ遺伝子のままクラゲに育つというのです。

この成熟して若返って・・・のサイクルは、無限に続くというのだから驚きです。
  

そして、「ベニクラゲ」の「不死」の仕組みを応用して、人間にも役立てようという研究もあるのだそうです。
 

僕は「火の鳥」に影響を受けたせいか、「不死」については、憧れるような怖いような、ハッキリしない認識で揺れ動いている、というのが正直なところです。

でも、もし「ベニクラゲ」の研究が進んで健康寿命が50年とか100年とか伸びたら、人生の儚さはずいぶん解消されるんじゃないかなぁ、なんて期待もしたりしています。

終わりに

火の鳥「宇宙編」では、「命」のことだけでなく、極限に追い込まれた人間が感情を抑えきれず爆発させるシーンが印象的でした。

あんなに理性的でおとなしかった「猿田」が、「ナナ」を愛するあまり「マキムラ」を殺そうとしたのは正直悲しく残念でした。
 

「猿田」はその後、「マキムラ」を殺そうとした罰として火の鳥に醜い顔にされ、子孫にまで不幸を約束されたうえで、地球に戻されることになります。

でもこれって、「猿田」は一応生き残れたわけだし、子孫も残せることは残せるということなので、「マキムラ」に比べたら全然軽い罰な気がするのですが、、いかがでしょうか?

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