手塚治虫『火の鳥』鳳凰編 感想 無限に繰り返す残酷な輪廻の物語
こんにちは、べっちです。
今日は手塚治虫『火の鳥』鳳凰編についてお話します。
二度と人間に生まれ変われないと知らされる残酷さ
今回の「鳳凰編」は「輪廻」がテーマではありますが、僕は正直、「輪廻転生」というものを信じてはいません。
信じたい気持ちはあって、むしろ強いです。
死んでもまた生まれ変わることができたら、どんなに素晴らしいだろうと思います。
でもやっぱり人生は一度っきり、「一生」であって「二生」は無いのが現実なのではないかな?と考えています。
まぁ、「未来編」で読んだ「宇宙生命」の話は、そんな僕の死生観を揺るがすものではありましたが。。
火の鳥「未来編」の感想はコチラです。
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手塚治虫『火の鳥』未来編 命と宇宙と不死と核と… 盛り沢山の物語
さて、仮にもしも「鳳凰編」で出て来たように「輪廻転生」というものがあるなら、やはり次の命も「人間」として生まれたいものです。
来世がダメなら、来世の来世でもいいし、その次でも、その次の次でもいいです。
今回は男だったから、次は女がいいかなぁ。
母になり子を産み、自分で産んだ子を育てるのって、どんなだろう・・・?
そしてできれば、現世で失敗してきたあれやこれは、来世では回避して、もっとうまくやれたらなぁ、なんて思ったりもします。
しかし、主人公の「茜丸」が死ぬ間際に「火の鳥」から聞かされたことは、非常に残酷なものでした。
茜丸は死んだらすぐに「虫」となり、その後「カメ」になり、そしてその後も「人間」に生まれ変わることは永久にないとのことなのです。
わざわざそんな知らなくてもいいことを聞き、絶望に苛まれながら死んでいくのって、なんとも残酷なことだと思いました。
茜丸はそんなに悪いことしただろうか?
それにしても、「茜丸」は人生を通して、そこまで悪いことをしたことがあったでしょうか?
僕の目には、彼の人生は仏師として一生懸命働き通した立派な人生に映ります。
途中権力にまみれて以前のような気高さは失ってしまいましたが、それでも懸命に働いたことに変わりありません。
最後には「我王」との対決で不利になり、嫉妬心から我王が罪人であることをバラして陥れ、我王は罰として片腕を失うことになります。
最初読んだ時は、
「それバラしちゃ絶対ダメでしょ」
って思いましたが、冷静になって考えてみると、茜丸は本当のことを話したに過ぎません。
うーん、火の鳥って意外と理不尽なのかも・・・
それとも、ひょっとしたら「火の鳥」は、人間が考える「善悪」とは別の角度で人の価値を見出しているのかもしれません。
「我王」は、生まれてすぐに片方・片手を失うという業を背負っていたとはいえ、何十人もの人を殺した恐ろしい人です。
しかし、その後は時間をかけて「生も死も仏なのだ!」という悟りを得るまでに心が成長しました。
また、のちに何十万人もの人を救うことになる魂を込めた彫刻を、全国に作り歩きました。
かたや「茜丸」は、純粋に彫刻道を追い求めていた心を次第に忘れ、多くの人が日照りに苦しんでいることを知っても意に介さず、権力に守られ私利私欲に走るようになりました。
そして、最後には人を陥れるような行為もしてしまいました。
火の鳥にとっては、罪を背負いつつどん底から這い上がって「命」を見つめた「我王」の方が、ずっと価値のある人間に映ったのかもしれません。
「未来編」は結局のところ過去だったのか?未来だったのか?
「鳳凰編」を読み終え、「火の鳥」の時間の前後関係がなんだか良く分からなくなってしまい、ちょっと混乱しています。。
「未来編」では、遠い未来に核戦争で生命が絶滅し、何億年も待って生命誕生から人類誕生、そして「黎明編」までつながるストーリーが展開されました。
なので、「未来編」は過去のことだったのかぁ、と一旦納得していたのです。
しかし、「鳳凰編」ではなんと、遠い未来に「我王」の子孫「猿田博士」が、生命滅亡の際に空しく死ぬことが「火の鳥」により語られます。
あれ、結局「未来編」はやっぱり「未来」??
でもそれだと「未来」が「過去」になって、「過去」が「未来」になって、矛盾してしまいます。
もしかしたら、起源と終末までの繰り返しでは、全く同じ運命が繰り返される、ということだったりして。
何回繰り返しても、一挙手一投足同じになる・・・?
これを現実世界に当てはめたらめちゃくちゃ怖いです。
数十億年後に、終末と起源を一周して現代に、今の僕と全く同じことをしている僕がいることを想像してしまい、背筋がゾワゾワしてしまいました。。
でも、「未来編」の最後では、今度の人間こそは正しい道に進化するよう願う「火の鳥」の想いが描かれていました。
つまり、似たような運命をたどるかもしれないですが、全く同じという訳では無さそうでウですね。。
このあたり、今後の巻で明らかになっていくのでしょうか?
「火の鳥」の次の展開が楽しみです。
それでは、今日も最後まで読んでいただき、どうもありがとうございます。
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ディスカッション
コメント一覧
初めまして。
そもそも、「火の鳥」の時系列に関して解釈をつけて並べるのはある意味間違ってると思います。
あの鳥は時空を超越した存在で描かれてますから、例え過去の話に鳥が何千年の未来の話をしてもおかしくないでしょう。過去でもあり未来でもあり現在でもあるのが鳥であり、いつでもどこでも居る普遍の象徴ではないでしょうか。