手塚治虫『火の鳥』鳳凰編 感想 無限に繰り返す残酷な輪廻の物語

2018年5月2日

こんにちは、べっちです。

今日は手塚治虫『火の鳥』鳳凰編についてお話します。

二度と人間に生まれ変われないと知らされる残酷さ

今回の「鳳凰編」は「輪廻」がテーマではありますが、僕は正直、「輪廻転生」というものを信じてはいません。
 

信じたい気持ちはあって、むしろ強いです。

死んでもまた生まれ変わることができたら、どんなに素晴らしいだろうと思います。
 

でもやっぱり人生は一度っきり、「一生」であって「二生」は無いのが現実なのではないかな?と考えています。
 

まぁ、「未来編」で読んだ「宇宙生命」の話は、そんな僕の死生観を揺るがすものではありましたが。。

火の鳥「未来編」の感想はコチラです。
↓↓
手塚治虫『火の鳥』未来編 命と宇宙と不死と核と… 盛り沢山の物語
 
 

さて、仮にもしも「鳳凰編」で出て来たように「輪廻転生」というものがあるなら、やはり次の命も「人間」として生まれたいものです。

来世がダメなら、来世の来世でもいいし、その次でも、その次の次でもいいです。
 

今回は男だったから、次は女がいいかなぁ。
母になり子を産み、自分で産んだ子を育てるのって、どんなだろう・・・?

そしてできれば、現世で失敗してきたあれやこれは、来世では回避して、もっとうまくやれたらなぁ、なんて思ったりもします。
 

しかし、主人公の「茜丸」が死ぬ間際に「火の鳥」から聞かされたことは、非常に残酷なものでした。

茜丸は死んだらすぐに「虫」となり、その後「カメ」になり、そしてその後も「人間」に生まれ変わることは永久にないとのことなのです。
 

わざわざそんな知らなくてもいいことを聞き、絶望に苛まれながら死んでいくのって、なんとも残酷なことだと思いました。
 

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茜丸はそんなに悪いことしただろうか?

それにしても、「茜丸」は人生を通して、そこまで悪いことをしたことがあったでしょうか?

僕の目には、彼の人生は仏師として一生懸命働き通した立派な人生に映ります。

途中権力にまみれて以前のような気高さは失ってしまいましたが、それでも懸命に働いたことに変わりありません。
 

最後には「我王」との対決で不利になり、嫉妬心から我王が罪人であることをバラして陥れ、我王は罰として片腕を失うことになります。

最初読んだ時は、
「それバラしちゃ絶対ダメでしょ」
って思いましたが、冷静になって考えてみると、茜丸は本当のことを話したに過ぎません。
 

うーん、火の鳥って意外と理不尽なのかも・・・
 
 

それとも、ひょっとしたら「火の鳥」は、人間が考える「善悪」とは別の角度で人の価値を見出しているのかもしれません。
 

「我王」は、生まれてすぐに片方・片手を失うという業を背負っていたとはいえ、何十人もの人を殺した恐ろしい人です。

しかし、その後は時間をかけて「生も死も仏なのだ!」という悟りを得るまでに心が成長しました。

また、のちに何十万人もの人を救うことになる魂を込めた彫刻を、全国に作り歩きました。
 

かたや「茜丸」は、純粋に彫刻道を追い求めていた心を次第に忘れ、多くの人が日照りに苦しんでいることを知っても意に介さず、権力に守られ私利私欲に走るようになりました。

そして、最後には人を陥れるような行為もしてしまいました。
 

火の鳥にとっては、罪を背負いつつどん底から這い上がって「命」を見つめた「我王」の方が、ずっと価値のある人間に映ったのかもしれません。

「未来編」は結局のところ過去だったのか?未来だったのか?

「鳳凰編」を読み終え、「火の鳥」の時間の前後関係がなんだか良く分からなくなってしまい、ちょっと混乱しています。。
 

「未来編」では、遠い未来に核戦争で生命が絶滅し、何億年も待って生命誕生から人類誕生、そして「黎明編」までつながるストーリーが展開されました。

なので、「未来編」は過去のことだったのかぁ、と一旦納得していたのです。
 

しかし、「鳳凰編」ではなんと、遠い未来に「我王」の子孫「猿田博士」が、生命滅亡の際に空しく死ぬことが「火の鳥」により語られます。
 

あれ、結局「未来編」はやっぱり「未来」??

でもそれだと「未来」が「過去」になって、「過去」が「未来」になって、矛盾してしまいます。
 

もしかしたら、起源と終末までの繰り返しでは、全く同じ運命が繰り返される、ということだったりして。

何回繰り返しても、一挙手一投足同じになる・・・?
 

これを現実世界に当てはめたらめちゃくちゃ怖いです。

数十億年後に、終末と起源を一周して現代に、今の僕と全く同じことをしている僕がいることを想像してしまい、背筋がゾワゾワしてしまいました。。
 

でも、「未来編」の最後では、今度の人間こそは正しい道に進化するよう願う「火の鳥」の想いが描かれていました。

つまり、似たような運命をたどるかもしれないですが、全く同じという訳では無さそうでウですね。。
 

このあたり、今後の巻で明らかになっていくのでしょうか?

「火の鳥」の次の展開が楽しみです。
 

それでは、今日も最後まで読んでいただき、どうもありがとうございます。

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