手塚治虫『火の鳥』乱世編 感想 理不尽さ悲しさ倍増の「平家物語」
こんにちは、べっちです。
今日は、手塚治虫『火の鳥』乱世編についてお話します。
伝説の「火焔鳥」に翻弄される平安末期
乱世編では、実際にはこの時代に登場しない火の鳥「火焔鳥」が、歴史のターニングポイントとして重要な役割を担っていました。
平清盛も、木曽義仲も、源義経も、みんな伝説の「火焔鳥」に翻弄されて不幸の道をたどることになるのです。
中でも平清盛なんて当時最高の権力を持っていたのに、自分が死んだ後の平家のことまで心配して「火焔鳥」の不死の力を求めます。
しかしその結果は、人々の恨みを買うことになり、結局は自身の寿命も、平家滅亡までの寿命も、短くしてしまいました。
最近読んだDカーネギーの「道は開ける」という本にもありましたが、やはり「欲」というものは出せば出すほど、幸せは遠ざかっていくものなのかもしれませんね。
特に、人様に迷惑をかけてまで欲しがってしまう「欲」は、結局のところは自分も不幸にしてしまう、ということなのだと思います。
「ヤマト編」では、
- 幸せとは、生きがいを見つけること
- 生きがいとは、自分が打ち込めるものを見つけて突き進むこと
であることを学びました。
「乱世編」ではこれに付けくわえて、
- いくら自分の信じた道であったとしても、他人を犠牲にするようなものであれば、決して幸せになれない
ということを学びました。
人を陥れるようなことは、自分の幸せのためにもならないということは、しっかり頭に入れておきたいです。
でも、猿の「赤兵衛」、犬の「白兵衛」のエピソードにもあったように、「権力欲」は獣にも存在する根源的な欲なのですね。。
そう考えると生き物って、本質的に「欲」にとらわれがちで、幸せになれない一面を元々持っているのかもしれません。。
明雲僧正があっさり殺されるシーンに唖然
明雲僧正は、「乱世編」の最初の方に出てきて、常に世の中を冷静に見つめ、先々のことまで見通す英知のある人物でした。
明雲僧正の考え一つで、画策されていたクーデターが立ち消えになるほどの影響力のあるスゴイ人です。
義仲が来た時も、明雲氏は冷静に対処して、事態を良い方向に導いてくれるものだと思っていました。
てっきり、いきりたつ義仲を上手に説得して、都で暴れる部下たちも大人しくなるかな?と期待していたんですけどね。
明雲氏本人も、「都に来るほどの人物だから大丈夫」と、いつもと変わらぬ達観した様子でした。
が、意外なことに明雲僧正は、あっさりと義仲に殺されることになってしまいます。
いかに賢くとも、いかに徳があっても、悪の前にはあっさりと打ち砕かれる・・・
綺麗ごとをいくら並べたところで結局のところ、これがリアルな現実ということでしょうか。
その後、
・義仲もヒョウタンカブリの弓矢に倒れ、
・ヒョウタンカブリも義経に殺され、
・最期には義経も怒り狂った弁田に殺されるという。。
・・・なんという悲しい展開なのでしょう。
おまけに、義経と清盛の生まれ変わりである「赤兵衛」と「白兵衛」も、最後には殺し合って死んでしまいます。
そして火の鳥が言うには、次に生まれ変わっても、何度生まれ変わっても、同じように殺し合う運命にあるとのこと。。
生まれる前から本当に運命が決まってるのなら、僕の運命も決まっているってことでしょうか?
以前ぼーっとしながら、僕が今までしてきたこと、これからの選択、そして何気なく過ごしている一瞬一瞬の行動が、全て運命で決まってるのかもなぁ、なんて考えたことがあります。
他にも、宇宙全体がバーチャルリアリティで、外側からDVDのように再生されているだけで、何回再生しても全く同じになる、という宇宙観を想像して怖くなったこともあります。
でもやっぱり、普通に考えてそんな訳ありませんよね。。
当たり前のようですが、人生とは、刻々と過ぎていく時間の中をどう生きるかによって決まるものだと僕は思っています。
乱世編を書いた時の手塚先生は、もしかしたら大分病んでいたのかもなぁ。。
白兵衛と赤兵衛も、次に生まれ変わるときには運命に抗って、敵対することはあっても最後には仲直りして欲しいものです。
終わりに
乱世編は、「平家物語」の「手塚治虫」版として、オリジナリティあふれるキャラ設定や意外なストーリー展開など、読み応えのある作品でした。
でも反面、今まで以上に悲しい出来事が多く、正直今も書きながら気持ちが沈んでいます。。
ポジティブにとらえようとしても、あまりの理不尽さにため息がでてしまいます。
でも、乱世とはこういうものなのですね。
現代世界でも、ひとたび極東の平和が崩れれば、あれよあれよと言う間に乱世に突入し、僕もある日戦争に赴いて、流れ弾に当たってあっさり死んでしまう、なんてこともありえます。。
そんな最悪のことを考えたら、本当に多くは望まないので、平和な日々が続くことだけは願わずにはいられません。
さて、次は「生命」編です。
少しは明るいお話になるとうれしいのですが、どうなることでしょう。
それでは、今日も最後まで読んでいただき、
どうもありがとうございます。
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